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ビジョンウィンドウから眺める信濃の四季

窓の向こうに世界が見える〜信州つれづれ紀行から
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今日のビジョンウィンドウ
花桃の里 / 長野県上田市武石余里
行き着いた花桃の邑
 余里の花桃に出逢ったのは2011年5月のことである。そのときのことを以下のように書いている。
第 258回 / いちばんきれいな2週間
 ともしび博物館でもらった武石村、余里地区の「一里花桃」のパンフレットを片手に持って運転するうち、赤、ピンク、白と色鮮やかに咲く花桃の群生が見えてきた。もともとは自生していたシダレハナモモを、余里の人々が10年以上の歳月をかけ、沿道4kmにわたって、約2000本植えてできたという。世に「花桃の里」と呼ばれる里は他にも幾つかあるであろうが、余里の人々が「世界中でいちばんきれいな2週間」と自負するだけのことはある。いにしえの昔より桃源郷と呼ばれる永遠の理想郷があるといわれてきたが、ここ信州、武石村の余里の地もまた、そのひとつに数えられるのではなかろうか。春の花見は桜が代表格であろうが、花桃の鮮やかな色彩もまた気品に満ちて優雅である。
 それから幾度か訪れて来てはいたが思うように開花の時期と一致せず満たされぬ歳月を繰り返していた。どうやら今日は天の折節に恵まれたようである。余里の谷合の入り口にあるいつもの駐車場に車を入れようとすると、誘導の係員から手旗で谷合を先に行くよう促された。怪訝な思いとともに先行車両の後をついていく。どうやら坂道を谷合深く遡上していくようである。やがて道も細くなり行き止まりとなった。だがあろうことか、そこが「花桃の里」であった。隠されるように谷間に横たわる村は「邑」という字をあてたいような桃源郷の雰囲気を漂わせて迎えてくれた。「世界中でいちばんきれいな2週間」とは実にこのことであったのである。
文・撮影 / 柳沢 健
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