陽明は「心即理」を実現するための工夫として「知行合一」を促す。知行合一とは「知(考えること)と行(行うこと)を一致させる」とする思想である。多くの現代人は本音と建前のごとく、知と行を分離させて、一致させることを避ける。「言っていることとやっていることが違うではないか」という現代社会の嘆きは今や日常茶飯と化し、もはや社会規範の域にまで達している。この社会規範を「人倫の天秤」にするかいなかは、社会を構成する大衆の総意によるが、問題はそんなことよりも、その大衆を構成している人間をして宇宙に存在せしむる身中の心の混乱と荒廃である。
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知と行の分離をあえて例えれば、精神科医が述べる「精神分裂症」の症状である。放置すればさまざまな精神障害を誘発させることは必定である。それでは外なる社会が崩壊する前に、人間そのものが内なる心から崩壊してしまう。
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人間は知と行を一致させてこその「宇宙存在」なのである。いずれかを欠けばその両方が消滅してしまう。それは最先端量子物理学が述べる「物質の対消滅(※)」と等価である。
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人はこの世を生きるにおいて、行動するように考え、考えるように行動しなくてはならないのである。
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(※)対消滅とは
無からの有の発生過程は量子論物理学者ディラックが説明するところである。無から発生する有は「ペア粒子」と呼ばれる。ペア粒子は「電子(物質)」と「陽電子(反物質)」のペアで構成されており、この宇宙において単独(つまり、電子のみの状態、あるいは陽電子のみの状態)では存在することができない。生まれるのもペアであれば、消滅する時もまたペアなのである。ペア粒子の消滅は「対消滅」と呼ばれ、この時に光りを発する。
(詳細は以下の稿を参照)
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