未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
不確定性原理の探求(3)〜多世界宇宙解釈
「不確定性原理の探求(2)〜時間の不確定性(
第887回
)」では時間の同時性について探求した。解決の糸口は次なる「多世界宇宙解釈(パラレルワールド)」に引き継がれる。
パラレルワールドに関しては「平行宇宙〜パラレルワールド
(第830回
)」で詳述したので記述は割愛するが、そこでは量子の2重性(粒子性と波動性)の解釈として平行宇宙が論じられている。要点のみ言えば「量子は観測が行われるたびに、次々に平行宇宙へと分岐し続ける」ということである。
この解釈を不確定性原理に援用すれば、「量子の位置(粒子性)と運動量(波動性)の2つを同時に観測することができない」とする記述における「同時」とはすなわち「宇宙の分岐点」ということになる。
さらにどちらかの宇宙を観測したとたん、他方の宇宙が観測できないとは、2つの宇宙の境界には科学理論が破綻してしまう「特異点」が横たわっていることを示している。互いの宇宙を「同時にのぞき見ることができない」のはそのためである。どちらの宇宙を見るかは観測次第である。いうなれば「いずれの宇宙を観測するか」という「きっかけ」次第である。さらに言えばそのきっかけとは「いずれの宇宙を見たいか」という「あなたの意思」次第ということになる。
それはまた物質を追求してきた物理学が意識を追求する心理学に転じる重大な分岐点であるとともに、その分岐点こそ「多世界宇宙をつなぐワームホール(時空トンネル)」の入り口なのかもしれない。
では「同時とはすなわち宇宙の分岐点」とは何を意味しているのか。
宇宙の分岐に不可欠な行為とは「観測」である。であれば観測を時間に置きかえることに特段の不都合は生じない。 「観測=時間」という等価原理である。 観測の継続とは新たな宇宙への分岐の継続であり、分岐に応じた宇宙が次々に発生する。おそらくはこの「連続したメカニズム」そのものが「時間の正体」であろう。
そしてまたこのメカニズムを起動する観測とは「あなたの観測」であることも忘れてはならない。あなたが観測を継続するかぎり、このメカニズムは稼働し続ける。時間が流れるという感覚は、あなたの観測の母体である「あなたの意識の流れ」そのものをあらわしている。逆に意識の流れが停止すれば、時間の流れもまた停止するであろう。であればあなたの意識の流れをゆるやかにして、時間の流れをゆるやかにすることもまた可能である。 (
Pairpole
宇宙モデルを参照
)
「不確定なこころの時代〜さまよえる大衆心理(
第883回
)」、「こころの不確定性原理(
第884回
)」、「危うきに遊ぶ(
第885回
)」で描かれた現代人の不確定なこころとは、かくなる物質宇宙と意識宇宙の狭間に顕現した時空の「ゆらぎ」に帰因した未来に向けての相克と葛藤なのであろう。
2015.07.28
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