Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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真理の構造〜相対と絶対の狭間
 問題は解決されてこその問題であって、解決されなければ問題でさえない。 だがこの世では解決されない問題だらけである。 巷間、衆の注目を集めている自民党の裏金問題などはその代表であろう。 ひょっとすると事の当事者が目指している解はこの問題が解決されないところにあるのかもしれない。 解決されないところに解があるなど、問題としての体をなしていないが、「善処する」 という日本的な解決法とは、およそこのようなところに事の核心があるように思われる。 結局、事の帰結は 「うやむや」 に帰することになる。
 以上の記述に感じる戸惑いと困惑の原因は 「相対的真理」 を扱う社会的な問題を 「絶対的真理」 を扱う科学的な問題として描いたところにある。
 相対的真理とは、人為的な多数決によって決定される真理であって、専ら社会学的な問題の解決に使用される。 他方、絶対的真理とは、人為的な介入を排した宇宙の秩序や自然の摂理によって決定される真理であって、専ら科学的な問題の解決に使用される。 私はかくなる相対的真理の判定に用いる手法を 「自己保存の法則」 から導かれた 「人倫の天秤」 と呼び、絶対的真理の判定に用いる手法を 「エネルギ保存の法則」 から導かれた 「宇宙の天秤」 と呼んでいる。 それらの天秤の運用にあたって注意することは、どちらの真理も同じく真理であって、互いに互いを否定することはできないという点にある。
 正解は相対的真理と絶対的真理の狭間に開かれているのである。 哲学者、西田幾多郎は、その 「真理の狭間」 を 「相互否定的な絶対矛盾的自己同一の世界」 と述べている。 絶対矛盾的自己同一とは、一見すると対立して相容れないものが、見方を変えると同じものであるという意味で、西田は現在や世界が絶対矛盾的自己同一そのものであると考えたのである。
以下は長野県穂高東中学校にての講演からの抜粋

2024.04.03


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