未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知のワンダーランドをゆく〜知的冒険エッセイから
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大いなる悲観と大いなる楽観
日本はあたかも躁鬱病のようである。しばらく前の民主党政権下では「鬱状態」を呈し、すべては「悲観的」であった。自民党政権に変わるやいなや、今度は一転「躁状態」を呈し、すべては「楽観的」である。「大いなる悲観は大いなる楽観に一致する」とは、華厳の滝に身を投じた若者が死に臨んで記した言葉(巌頭之感)である。日本の現状をとらえて暗示的である。
※)「巌頭之感」とは
旧制一高生であった藤村操が、日光華厳滝での投身自殺を前にして、巌頭にあった大きなミズナラの樹肌を削って書き残した以下の文言。享年18歳、満16歳10か月の若さであった。
「巌頭之感」
悠々たる哉天壤、遼々たる哉古今、五尺の小躯を以て
此大をはからむとす。ホレーショの哲學竟に何等の
オーソリチィーを價するものぞ。萬有の
眞相は唯だ一言にして悉す、曰く、「不可解」。
我この恨を懐いて煩悶、終に死を決するに至る。
既に巌頭に立つに及んで、胸中何等の
不安あるなし。始めて知る、大なる悲觀は
大なる樂觀に一致するを。
(明治36年5月22日)
文 /
柳沢 健
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