その思考実験とは、ある種のコンピュータゲームである。例えば10人のゲーム者に各1台づつのコンピュータがそのゲームのために割り当てられている。ゲームは戦車を使った戦争ゲームであり、登場する10台の戦車の操作は割り当てられた10人のコンピュータに連動している。各コンピュータ画面には自分が搭乗する(例えばA)戦車の運転窓から眺められる戦場の様子が映し出されている。その構造は他の9人にも同様であり、ある人はBという戦車、ある人はCという戦車の運転窓から眺められる戦場の風景である。各人のコンピュータはネットワーク技術によりメインコンピュータにリンクされており、メインコンピュータのプログラムで集中制御されている。
つまり、Aという戦車からBという戦車に発射された砲弾はCという戦車からもDという戦車からも同時に「そのように」眺められる。但し、それはCという戦車の位置から、そしてCという戦車の運転窓から眺められる風景である。同様にD戦車に対応したコンピュータもE戦車に対応したコンピュータも、ともに各自が搭乗する戦車の位置とその位置から眺められる戦場風景である。この状態で、各々戦車に搭乗している各自が生き延びるように戦車を運転操作し、砲弾を発射し、戦場での位置を移動し、仮想的な戦闘を行うのがこの「戦争ゲーム」の内容である。
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