未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
哲学をもって明日を拓く
第1572回
「知をもって明日を拓く」 では明日を拓くに必要な 「知」 について論考した。 そこでは、知は 「観念の世界」 を弄ぶ 「静的な知」 としての 「知識」 であってはならず、現実に立脚した 「実在の世界」 を拓く 「動的な知」 としての 「知力」 を秘めたものでなくてはならないとした。
第1575回
「花のように鳥のように」 では、この世が過去も未来もない現在だけの 「シンプルな宇宙」 だとすれば、実在が保証されない過去や未来に基づいた 「未来の予定」 などもともと意味を成していないものであるとし、
第1576回
「自由の獲得」 では、かかる未来が予定されないことは、「何でもあり」 の 「自由を獲得」 することであり、「こうでなくてはならない」 という 「理由が消失」 することであるとした。
これらは明日を拓く知力の別側面を述べている。 知力は科学的な 「理(真理)」 に基づいたものであることを疑う人はいないであろう。 だが理に基づいた 「理由」 が消失してしまっては、知力はいったい何を基盤にするのか? 知の探求はいきなり科学理論が破綻してしまう 「特異点」 に達してしまう。
だがこの点こそが現代社会が乗り越えねばならない限界点なのである。 以下はペポール宇宙モデル構築の経緯を綴った 「
ペアポール宇宙モデルに寄せて
」 からの抜粋である。 かくなる特異点突破に用いた思考展開について書かれている。
この宇宙モデルの分類を 「科学哲学的宇宙モデル」 としたのは、科学的思考が行き詰まれば哲学的思考をもって突破し、逆に哲学的思考が行き詰まれば科学的思考をもって突破することで探求を進めていったからです。 科学には特異点と呼ばれる科学理論が破綻してしまう限界点があります。 その先には科学的思考をもってしては進むことはできません。 ゆえに別次元の視点をもつ哲学的思考を使ってその科学的特異点の解消を画したのです ・・・ またこの宇宙モデルの副題を 「宇宙の構造とメカニズム」 としたのは、私自身が機械工学を専門分野とする技術者であったからに他なりませんが、もともとこの宇宙モデルの構築には限られた専門分野にこだわることなく、あらゆる分野を分け隔てなく統合することで観えてくるものを目指していました。 必要とあれば、いかなる学際をもクロスオーバーして 「知のワンダーランド」 に挑んだのです ・・・ もとよりいかなる学説や理論でも、もともとは不完全なものであって、当面、矛盾なく現象や事態を説明できるというだけのものです。 もしその論の説くところに矛盾がでてくれば、たちまちにしていかなる学説や理論であっても、破棄される運命にあります ・・・ 「ペポール宇宙モデル」 は自らの思考が及ぶ限りの認識を矛盾なく妥当性をもって説明しているとした宇宙モデルですが、この宇宙モデルがあらゆる学際をクロスオーバーした 「知的冒険」 によって導かれた論であることを考えれば疑義百出は無理からぬことであってさけることはできません。 しかしながら、知のワンダーランドを拓く者が頼るべきは 「人倫の天秤」 ではなく 「
宇宙の天秤
」 なのです。
以上から導かれる帰結は、科学的思考である理に基づいた知力が限界をむかえたときに頼るべきは、「哲学的思考に基づいた知力である」 ということである。 結局。 「知をもって明日を拓く」 という箴言は 「哲学をもって明日を拓く」 と改題されることになる。 知に偏し凝り固まった世界を拓くためには 「哲学的思考」 こそが求められるのである。 つまり、現実に立脚した 「実在の世界」 を拓く 「動的な知」 としての 「知力」 とは 「哲学」 のことになる。
2021.12.16
copyright © Squarenet