Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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あなたあっての宇宙
 第1346回 「現れる世界の断章」 では、図らずも 「人間あっての宇宙」 という究極の宇宙存在原理に行き着いた。 その思考過程はシュレジンガーの波動理論から導かれた波動関数の収縮という観測問題が布石となっている。 新たな宇宙を発生させる観測が意識的観測であること、それを為せる唯一の存在が人間であることがその根拠である。 その帰結はかって別の思考過程を経て行き着いた 「あなたあっての宇宙」 という結言と同じであった。 その経過は以下のようであった。
 「宇宙の構造とメカニズム」 と題した中学生に向けた講演の中で私は 「宇宙とは容器のような空間に物質が存在しているのではなく 物質が空間を発生させているのだ」 と語った。 2003年のことである。 (講演録 第18項 物質が空間と時間を発生させる を参照) 前者は 「空間があっての物質」 であり、後者は 「物質があっての空間」 である。 空間と物質の主客は互いに逆である。 一般的には前者の考え方を採る人が大半であろうが、この考え方を採ると 「宇宙の果て」 と 「時間の始まりと終わり」 という人類が抱える永遠の謎(特異点)に直面してしまう。 後者の考え方を採った私は 「宇宙に大きさはなく 時間は流れない」 とする考えに帰着した。 つまり、宇宙とは 「仕組み」 という概念であって 「大きさ」 という概念ではないとする宇宙モデル(Pairpole 宇宙モデル)である。 この宇宙モデルでは 「宇宙の果て」 や 「時間の始まりと終わり」 の謎(特異点)は曲がりなりにも解消されている。
 だがその講演の中で話した 「皆さんという物質的な存在があることで皆さんの周りに皆さんの時間と空間が生まれているのだ」 という 「あなたあっての宇宙」 という論旨を当時の中学生たちはいかに聴いたのであろうか? 私はその中で、探すべき新たな世界はその世界を発生させている主体である 「あなた自身の周りに」 拓かれていること、それは童話 「青い鳥」 のように、幸せの青い鳥は 「自らの窓辺にいる」 のであって 「山のあなたの空遠くにいる」 のではないことを伝えたかったのであるが ・・ さてどうであったであろうか?
 畢竟如何。 失われた世界にしろ、現れる世界にしろ、すべてはあなたの周りに横たわっている世界である。 いかなる世界に住むかはあなたしだいである。

2019.07.28


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