「風立ちぬ、いざ生きめやも」は記念館内の資料閲覧室に掲げられていた。この有名な詩句はポール・ヴァレリーの詩「海辺の墓地」の一節
“ Le vent se leve, il faut tenter de vivre ” を堀辰雄が訳したものであるという。
文庫版「風立ちぬ」付録・語註では ・・ 「風立ちぬ」の「ぬ」は過去・完了の助動詞で、「風が立った」の意である。「いざ生きめやも」の「め・やも」は、未来推量・意志の助動詞の「む」の已然形「め」と、反語の「やも」を繋げた「生きようか、いやそんなことはない」の意であるが、「いざ」は、「さあ」という意の強い語感で「め」に係り、「生きようじゃないか」という意が同時に含まれている。ヴァレリーの詩の直訳である「生きることを試みなければならない」という意志的なものと、その後に襲ってくる不安な状況を予覚したものが一体となっている。また、過去から吹いてきた風が今ここに到達し起きたという時間的・空間的広がりを表し、生きようとする覚悟と不安がうまれた瞬間をとらえている
・・ と記している。
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