未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
行きすぎた成功
「選択と集中」という経営戦略が喧伝されたのは30年も前になろうか。米国GEのCEO、ジャック・ウェルチが採った戦略として瞬く間に世界中を席巻した。
「選択と集中」とは、多角的に行っている事業のうち業界「No.1〜3」の事業に経営資源を集中させ、それ以外の事業は他企業へ売却、あるいは廃止等のリストラを行うという経営手法である。GEはこの手法を用いて事業再編と資源再分配を行い業績を飛躍的に向上させた。
かくなる戦略は経営資源の集中にとどまらず、「富の集中」の原動力として機能し、同時に「勝ち組、負け組」という格差社会を拡大させる原因ともなった。
「選択と集中」とは視点を変えれば「市場の占有(囲い込み)」である。囲い込みが自らを衰退させてしまうことは「囲い込み理論(
第974回
)」で述べたことであり、大繁栄をとげた古生代生物、三葉虫(約 5億 7000万年前〜約 2億 5000万年前)絶滅の原因がその大繁栄(大繁殖)にあったことは「繁栄の代償(
第673回
)」で述べたことである。
今世界を覆っている不安と混乱と戸惑いとは、あるいはかくなる「行きすぎた成功」への違和感が潜在しているのかもしれない。
2017.01.09
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