未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
ワームホール(8)〜宇宙とは現象である
第896回
「宇宙とは現象である」では、ワームホールの命名者であるジョン・アーチボルト・ウィーラーの人生とその宇宙観を描いている。
宇宙とは現象である
ジョン・アーチボルト・ウィーラー(米1911〜2008年)はニールス・ボーアの弟子にしてアルベルト・アインシュタインの共同研究者でもあった「詩心をもった物理学者」である。「ワームホール」や「ブラックホール」の命名者としても知られている。
ウィーラーは「現実はすべて物理的なものではないかもしれない」と問題提起した最初の物理学者である。我々の宇宙は「観測行為と意識を必要とする参加方式の現象かもしれない」というのである。ウィーラーは「人間原理」の普及にもひと役かった。人間原理とは「宇宙がこのような状態になっているのは、もし他の状態だったら人間がここにいて宇宙を観測することができないから」という人間主体の原理である。
空海が遺した「生まれる前に宇宙はなく、しかして死して後に宇宙はない」という「太始と太終の闇」(
第895回
)を物理学的に換言すれば、ウィーラーが言うように「宇宙とは観測行為と意識を必要とする参加方式の現象」と訳されることになるのかもしれない。
つまり、「宇宙とは現象である」と。
もっとも詩心をもった物理学者のウィーラーであってみれば、かくなる表現もまた空海どうように多分に文学的な修辞なのかもしれない。
もしウィーラーが言うようにこの宇宙が現象であってみれば、我々が今、世界と言っている宇宙もまたさまざまなワームホールで繋がった多世界宇宙(パラレルワールド)の中の変哲なきひとつの「ワールド」ということになる。
ワームホール(9)〜余話として /
第993回
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2016.12.28
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