伊那から高遠を経て長谷に向かって車を走らせると右手に、高さ69.1m重力式コンクリートダム「美和ダム」が見えてくる。美和ダム湖はエメラルドグリーンの満々たる水量を蓄えて静かに横たわっている。湖周辺には多くの動植物が見られ、特に昆虫類は2,000種近くが生息しているという。ダム湖にはかなりの堆砂量があるため、上流に貯砂ダムを建設、洪水時には砂の混ざった水がダム湖へ流入しないよう分派堰ゲートから、バイパストンネルを通って、美和ダムの下流に流すようになっている。美和ダムの堤体を見上げる位置に、ローマの遺跡のような形をしたその排水口が黒い大きな口を開けてその時を待っている。 ダム湖をさらに遡上すると「ゼロ磁場」のパワースポットで今話題を集めている「分杭峠」を経て、「大鹿歌舞伎」で有名な大鹿村に至る。日本列島を縦断する「中央構造線」が走るこの地域は地球物理学的にみても特異な空間である。3.11東北大震災以後、この列島の地中奥深くでは、何か得たいのしれない力がうごめいているようで気がかりだが、願わくはその力がうまく拡散して、ことなきを得ることである。
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