アベノミクスを推進する安倍政権は今、経済の成長をトップにすえて、あらゆる努力をこの成長策に注ぎ込み、TPP交渉に、原発再稼働にと邁進している。だが日本の現状をつぶさに眺めれば、いたるところに傷を負って、惨状は目を覆うばかりである。東北大震災の復興は遅々として進まず、原発事故の復旧はめどがたたないばかりか、日増しに事態は悪化しているようにみえる。地球温暖化に端を発した猛暑と豪雨は列島各地にさらなる被害と被災者を生み続けている。この状態で東北大震災クラスの地震が、首都直下を、あるいは東海沖を襲ったら、その被害は日本国にとって、もはや立ち上がれないほどの致命傷となろう。経済の成長どころの話ではない。政府の成長政策の底流には、そのような「大震災は発生しない」とする不作為然とした暗黙の了解が横たわっている。それは原発事故は発生しないとして原発政策を推し進めた「安全神話の構図」と何ら変わるところはない。
|