空間とは幾何学であり、リーマンはいかなる空間の幾何学にも普遍的に通じる表現手段を求めた。リーマンはそれが「距離(計量とも呼ばれる)の概念」であることを予見したのである。平坦なユークリッド空間での2点間の最短距離は、直角三角形における x 軸方向の距離を a とし、y 軸方向における距離を b とした場合、斜辺の c である。リーマンの天才は空間が平坦でない場合にまで、この“ 距離 ”を一般化させたことにある。空間は曲がっているので、直角がもはや直角ではなく、角度 φである場合、ピタゴラスの定理は、c2=a2+b2 から c2=a2+b2−2ab cosφに一般化されると、あらゆる空間での2点間の無限小の距離を測る関数を定義したのである。リーマン幾何学の要点は言ってみればこれだけである。のちにこの計量の概念は、まったく新しい理論「微分幾何学」を生むことになるのだが、悲しいかな虚弱体質であったリーマンにはそれほど時間がのこされてはいなかった。1866年7月、北イタリアのマジョーレ湖畔の別荘で肺病に倒れ、39歳でこの世を去った。
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