「無常を観じて足を知る」とはいったいどのような心境なのであろう。なぜか私には「おもしろきこともなき世をおもしろく
・・ 」という辞世の句をのこした維新の英雄、高杉晋作や、ハードボイルド小説の旗手、レイモンド・チャンドラーが生み出した不朽の名探偵、フィリップ・マーロウのことどもが思い浮かんでくる。定宿の2階で三味線をひきながら夕日に染まった瀬戸内の海を眺めている「晋作の風景」、泥のような眠りから目覚めいつもの流儀で点てたコーヒーを飲みながら窓にあたる朝日を眺めている「マーロウの風景」、これらの風景と「空海の風景」が重なって見えるのである。
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