戦闘は上杉軍が優勢に進めたが、乱戦となった機を逃さず、紺糸威の鎧の上に萌黄緞子の胴肩衣を着し、白手巾で頭を包み、放生月毛の馬に乗った謙信は、三尺の小豆長光の太刀を振りかざして、ただ一騎、信玄の陣営に突入し、電光石火のごとく三太刀信玄に斬りつけた。信玄は太刀を抜く間もなく、軍扇で謙信の太刀を防いだが、三の太刀は信玄の肩先を斬りつけ、信玄あわやと思われたとき、駆けつけた中間頭の原大隅守が槍で馬上の謙信をめがけて突き上げた。一瞬かわされ槍先は馬の尻を刺し、驚いて跳ね上がって駆け出したことにより、謙信は信玄の首を逸し、信玄は謙信の必殺の太刀から免れたのである。 後世に語りつがれた謙信と信玄の「一騎打ち」である。
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