フッサール現象学は、主観のみを使って客観を述べていることにおいて、それまでの哲学とは一線を隔している。だが、またその思考方法こそが、従来哲学の視点に立つ多くの研究者から独断的な「独我論」と批判される理由でもある。しかし、彼らがフッサールの主観による客観の実在証明を否定するならば、今度は逆に、彼らは客観による主観の実在を証明しなければならない。簡潔に言えば、客観的な科学的方法論をもって、自己のもつ主観的実在を証明することである。自己を細切れにして、科学的な測定と、観察と、分析を、行ったとしても自己の主観的実在を証明できるとは思えない。それを為さずして、ただ単に批判してみても、彼らが主張する、ある時は主観、ある時は客観という方法論での反論は、はなはだご都合主義的な「たわごと」でしかない。
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