ニーチェは100年前に、当時もてはやされていた科学的思考から構築された社会主義思想や、民主主義思想が将来にもたらす弊害を見抜いていた。彼は、これらの科学的思想が行き着いたところに顕れるであろう世界に生きる人々のことを「末人」と呼ぶ人間モデルで表現し、その末人の登場まで200数十年と予測した。しかし、現代人を眺めると、まさに彼が描いた末人の人間モデルに近づきつつあり、事態は予測以上の速度で進行しているように思われる。ニーチェが提示した末人の人間モデルとは、自己意思をもたず、可もなく不可もなく、争いを好まず、すぐ妥協し、健康のみに気をくばり
・・等々。つまり、現代社会を構成する多くの人々が呈する人間像に酷似する。彼は、これらの「末人」の到来を予測したうえで、そのような社会の中で人類の救いとなる「超人」の登場を希求したのである。
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