未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知のワンダーランドをゆく〜知的冒険エッセイから
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時間の消滅
私は午前8時にこのバス停に到着するバスを待っている。
午前8時という時間が、そのバス停にそのバスを出現させるのか ・・?
それとも、そのバスがそのバス停に出現した時間が午前8時になるのか ・・?
そうではない、そのバスは出現すべき状況下に、そのバス停に出現するのである。
同様に、私は午後7時に夕食を食べるのか ・・?
それとも、食べた時間が午後7時になるのか ・・?
そうではない、食べるべき状況下に、食べるのである。
私の父は75年間という時間を生きたのか ・・?
それとも、生きた結果が75年間なのか ・・?
そうではない、生きるべき状況下に、生きたのである。
このようにこれらの出来事から時間概念を消滅させると、出来事は来るべき状況下で、この「今の今」という刹那空間である現在世界に、あるべき姿で出現するように観える。時間の呪縛から解放された意識とはそう意識するであろう。
刹那空間にはさまざまな意識が「かく来たりて、かく去っていく」、それらの意識がこの「今の今」という刹那空間で交錯し(意識の巡り逢い)、織りなし(意識物語の構成)、意識的な
直観的場面
を構築し、構築された直観的場面が物質的な
歴史的場面
を現在というスクリーンに投影し、実在場を構築する。
つまり、「私の父は死んだのではなく、父の意識が時空の彼方へ去った」のである。
文 /
柳沢 健
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