十一面観音を蔵した観音堂は由布姫が在世した当時のものであり、由布姫はもちろん夫の信玄も、父の頼重もまた拝したものにちがいない。その観音堂を撮影していると、院の寺人が堂の内陣を案内してくれるというので見せてもらった。由布姫が拝したと同じ間近な視線で厨子を仰ぐことができるなど望外の幸運であった。またその折り、諏訪氏にまつわる数々の古事来歴、あるいは真言密教に関することども懇切な説明をいただいた。本旨をはずれるのでここでは割愛させていただくが、どこかでしっかりと書いてみたいことばかりであった。その後、当院の住職にもお会いし、数々の資料をいただいた。まことにもって感謝にたえない心遣いに出逢った日であった。
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