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ビジョンウィンドウから眺める信濃の四季

窓の向こうに世界が見える〜信州つれづれ紀行から
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御射鹿池 / 長野県茅野市北山奥蓼科
緑響く
 東山魁夷画伯の代表作、「緑響く」のモデルとなった御射鹿池 (みしゃかいけ)は奥蓼科温泉に至る道沿いにあった。描かれた季節とは少々違っていて樹木は黄色がかってはいたが、見た瞬間に「緑響く」が彷彿としてイメージされた。新緑の頃に来たならば、おそらく湖面の色も周囲の木々も寸部たがわず、画伯の描いた色彩を奏でていたことであろう。しいていえば湖畔に白馬がいないぐらいのものではなかろうか。
 その後たどった東山画伯の創作活動を省みるとき、この池の影響力は決定的なものであったかと思われる。山深い信州の片隅に忘れられたようにたたずんでいた小さな池に示現した自然の啓示は、東山魁夷というひとりの芸術家に天恵をもたらし、豊饒な作品群を生むことを可能にしたのである。それは人とめぐり逢うだけでなく「自然とめぐり逢う」ことでも運命が変転することの証左であろう。
 ちなみに御射鹿池の由来とは ・・ 諏訪大社に伝わる神に捧げるための鹿を射るという神事、御射山御狩神事にその名前の由来があると思われている。また御射山祭として諏訪明神が狩りをされるとされていたこのあたりの土地は神聖化されていて、そういった古来からの神事も行われていたことから、御射鹿池の命名につながったのではないか ・・ 画伯に示現した啓示、さもありなんの由来である。
文・撮影 / 柳沢 健
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