Linear 信州ベスト紀行セレクション
伊那市にて(5)
Linear
Backward | Forward
春日城址公園 / 長野県伊那市
落葉
 伊那文化会館で催されている 「池上秀畝の屏風絵展」 を見たあと、隣接する春日城址公園をぶらりと散歩した。 斜光が射す昼下がりの林間に人影はなく、散りつもった落葉が晩秋の気を漂わせていた。
 池上秀畝(1874〜1944)が伊那高遠の生まれで、その生年が少し南に位置する飯田市に生まれた菱田春草(1874〜1911)と同年であったことは、この展覧会ではじめて知ったことである。 北に位置する松本市には、菱田春草、横山大観、下村観山とともに初期日本美術院の四天王とよばれた西郷孤月(1873〜1912)がいる。 ともに同時代に生きて、近代日本画の草創期を支えた逸材が、そろって信州出身であったことは驚きであるとともに、不思議な縁を感じる。 そんなことを考えるでもなく考えながら歩いているうち、春草の名作 「落葉」 が浮かんできた。 失明の危機にさらされながら描いた、生涯を代表する傑作である。 描いてから2年あまり、満37歳の誕生日を目前にして、春草はこの世を去っている。
 撮影されたカットはそのようなことを思いながら試みた、「360度動画映像表示技術」 を使った六曲三双の屏風絵、「落葉」 である。
2012.11
セレクションインデックス
copyright © Squarenet