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未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事

信州つれづれ紀行 / 時空の旅
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八ヶ岳倶楽部 / 山梨県北杜市大泉町
風に吹かれて
 「ハイジの村(第453回)」からの帰路、俳優の柳生博氏の運営になる「八ヶ岳倶楽部」の前を通りかかると、多くの観光客で賑わっていた。 さきほどのハイジの村とは対照的であった。
 八ヶ岳倶楽部は柳生氏一家が長年に渡って手入れしてきた美しい雑木林に囲まれている。その林の中からライブ演奏の音が響いている。
 曲目は先日、ノーベル文学賞に決まったボブ・ディランの「風に吹かれて」であった。 ただで聴くにはもったいないほどの上質な演奏であった。 そのメロディは昼下がりの斜光に照らされた雑木林の梢でしばらくリフレクトしたあと、吹く風にのって何方の空へか渡っていった。
※)風に吹かれて(1963年にシングル・カットされたボブ・ディランの代表作)
 ・・・・ どれだけの砲弾を発射すれば 武器を永久に廃絶する気になるのか 為政者たちは いつになったら人々に自由を与えるのか 一人一人にいくつの耳をつければ 他人の泣き声が聞こえるようになるのだろうか 人はどれだけの死人を見れば これは死に過ぎだと気づくのか ・・・・ 男はどれだけの道を歩けば 一人前と認められるのか 山が海に流されてなくなってしまうのに どのくらいの時間がかかるのか ・・・・ 答えは風に吹かれている ・・・・・
 以上の歌詞はディランの以下のコメントとともに発表された。
 ・・・・ この歌についちゃ あまり言えることはないけど ただ答えは風の中で吹かれているということだ 答えは本にも載ってないし 映画やテレビや討論会を見ても分からない 風の中にあるんだ しかも風に吹かれちまっている ヒップな奴らは「ここに答えがある」だの何だの言ってるが 俺は信用しねえ 俺にとっちゃ風にのっていて しかも紙切れみたいに いつかは地上に降りてこなきゃならない でも折角降りてきても 誰も拾って読もうとしないから 誰にも見られず理解されず また飛んでいっちまう 世の中で一番の悪党は 間違っているものを見て それが間違っていると頭でわかっていても 目を背けるやつだ 俺はまだ21歳だが そういう大人が大勢いすぎることがわかっちまった あんたら21歳以上の大人は だいたい年長者だし もっと頭がいいはずだろう ・・・・・
2016.10

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