Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
Turn

運命論と体験論〜演じることと生きること
 量子もつれが実証した非局所的宇宙における光速度を超えて伝達される局所情報が 「未知情報」 なのか、それとも 「既知情報」 なのかについては、第1965回 で論考した。
 アインシュタインの相対性理論では 「光速度を超える速度が規定されていない」 以上、その伝達速度は科学理論が破綻してしまう 「特異点」 であって、科学の認知力をもってしては解くことはできない。その伝達情報が未知のものであるとすれば、伝達の速度は無限大であろうし、既知のものであるとすれば、そもそも伝達される必要もない。
 情報を知ることと知らされていることでは、事後の顛末に与える影響は甚大過ぎて計量することはできない。 たどり往く人生の顛末がすでに既知のものであったとすれば、時間の概念は消滅し、同時に試行錯誤の意味もまた消失する。 結果、人生は運命の下に運行する 「運命論」 となる。 逆に、伝達速度が無限大であったとしても、人生の顛末が未知のものであったとすれば、時間の概念は残され、同時に試行錯誤の意味もまた残存する。 結果、人生は未知なる可能性を試行錯誤する 「体験論」 となる。
 知っている人生を生きることと、知らない人生を生きることとで、いずれが幸せなのかはそれぞれの価値観の違いによるところであろうが、いずれにしても 「楽しく生きる」 ことが 「生き甲斐になる」 ことだけは確かなことであろう。 それは知っている人生を 「演じる楽しさ」 と、知らない人生を 「生きる楽しさ」 の違いである。

2025.02.04


copyright © Squarenet