最低の軽蔑について話そう。 おしまいの人、末人のことを
・・・
「愛って何? 創造って何? あこがれって何?」
・・・ こう末人は問い、目をまばたかせる。
そのとき大地は小さくなっている。 その上を末人が飛び跳ねる。
末人は全てのものを小さくする。
この種族はのみのように根絶できない。
末人は一番長く生きる。
「われわれは幸福を作りだした」
・・・ こう末人たちは言い、目をまばたかせる。
彼らは生き難い土地を去る。 温かさが必要だから。
彼らは隣人を愛しており、隣人に身体を擦りつける。 温かさが必要だから。
病になること、不信を抱くことは、彼らにとっては悪となる。
彼らはいつも警戒し、ゆっくりと歩く。
なぜなら石にけつまずくもの、人間関係で摩擦を起こすものは
彼らにとって馬鹿者だから!
彼らはほんの少しの毒をときどき飲む。 それで気持ちの良い夢を見る為に。
そして最後には多くの毒を。 そして気持ち良くなって死んでゆく。
彼らもやはり働く。 なぜかといえば労働は慰みだから。
しかし慰みが身体に障ることのないよう彼らは気を付ける。
彼らは貧しくもなく、富んでもいない。
どちらにしても煩わしいのだから。
誰がいまさら人々を統治しようと思うだろう?
誰がいまさら他人に服従しようと思うだろう?
どちらにしても煩わしいだけだ。
既に牧人さえなく、畜群だけ!
飼い主のいない、ひとつの蓄群!
誰もが平等を欲し、誰もが平等であることを望んでいる。
みなと考え方が違う者は、自ら精神病院へ向かってゆく。
「昔の世の中は狂っていた」
・・・ と、この洗練されたおしまいの人たちは言い、目をまばたかせる。
彼らは賢く、世の中に起きる物事をなんでも知っている。
そして、何もかもが彼らの嘲笑の種となる。
彼らもやはり喧嘩はするものの、じきに和解する。
・・・ さもないと胃腸を壊す恐れがあるのだから。
彼らも小さな昼の喜び、小さな夜の喜びを持っている。
しかし、彼らは常に健康を尊重する。
そして「われわれは幸福を作りだした」
・・・ こう末人たちは言い、目をまばたかせる。
ここでツァラトゥストラの教説は終った。 これを世に呼んで、序説というのである。
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