およそ27分間に渡るこの講演の中で、「この度のノーベル文学賞の受賞にあたり、自分の歌が一体どう文学と結びつくのか不思議でならなかった。
その繋がりについて自分なりに考えてみたので、それを皆さんに述べようと思う」 と切り出し、音楽に身を投じる事になったきっかけを
「全ての始まりはバディ・ホリーだった」 と語り 「自分自身で歌を書き始めた際、自分が唯一知っているフォークという表現形態を存分に使った」
とも。 歌を書いていく中で礎となった 3冊 の本、メルヴィルの 「白鯨」、レマルクの 「西部戦線異常なし」、ホメロスの 「オデュッセイア」
については各書物を深く掘り下げ、「歌の詞は歌う為のものであり、ページに綴られているのを読む為のものではない。 そして、皆さんにも、これらの詞を、聴かれるべき形で聴く機会があることを願っている」
とし 「詩神よ、私の中で歌い、私を通して物語を伝えてくれ」 というホメロスの言葉で締めている。
歌は生きている人たちの世界でこそ生きるものなのだ。 でも歌は文学とは違う。 歌は歌われるべきものであり、読むものではない。
シェイクスピア劇の言葉の数々は舞台で演じられる為のものであるのと同様に、歌の詞は歌う為のものであり、ページに綴られているのを読む為のものではない。
そして、皆さんにも、これらの詞を、聴かれるべき形で聴く機会があることを願っている。 コンサート、或いはレコード、或いは今時の音楽の聴き方でも構わない。
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