Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
Turn

陽はまた昇る〜無人工場への夢
 日本の国民総生産(GDP)はドイツに抜かれ世界 第4位 となってしまった。 アメリカに次いで 第2位 であったGDPは中国の台頭で 第3位 となり、やがてはインドにも抜かれて 第5位 になると予想されている。 それは目を覆うばかりの凋落ぶりである。 原因は円安による為替レートのためだという識者の論評もあるが、本を正せば 「生産性の低下」 以外の何ものでもない。 ちなみに、2022年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)はOECD加盟 38カ国中 30位 で1970年以降で最も低い順位である。
 「メイドインジャパン」 を誇っていたかっての日本はいったいどこへいってしまったのか? それは国内の労働生産性を上げる努力を放棄して低賃金労働力を求めて東南アジア諸国(インドネシア、タイ、ベトナム、中国等)へ生産の拠点をシフトしたためではなかったか? そうであれば、かくなることは予期できたことである。
 私はかくなる国内空洞化を防ぐことを目的として 2002年7月 天井空間移動ロボット(Squaremeister)を使った 「無人工場システム」 を発表している。
 もし、メイドインジャパンで培った技術力をその方向に使っていたらどうであったであろうか? しかしながら、目先の利益を求めて猛進していた当時の日本の趨勢を止めることは、何人であってもできなかったのかもしれない。 それもまた 「歴史の必然」 である。
 だが 「日出ずる国」 の国史をもって成る、敷島の大和とあってみれば、「陽はまた昇る」 ことは疑いない。 以下は 「信州つれづれ紀行」 の取材で 2011年6月 長野県佐久市にある新海三社神社を訪れた折に出逢った、境内の一隅に立つ掲示板に掲げられていた、明治天皇御製の一首である。
いかならむ 事にあひても たわまぬは わが敷島の 大和だましひ
 東北大震災にあえぐ日本国民に向けて、励まし呼びかける明治帝の声が、天から降ってくるようであったことを、今でも鮮明に覚えている。 (第277回 「新海三社神社」)

2024.02.22


copyright © Squarenet