物質のみに向けられた視点で、この世の必要不可欠を抽出することは不可能である。
なぜなら紙の表を創りだしているのは紙の裏であり、善の価値を保証しているのは悪の価値であり、物質を存在させている原因は物質ではない反物質(空間)の存在なのである。
この世における真に必要不可欠な 「もの」 は、落胆や挫折や後悔や懺悔で描き出された空間の中から必然的に現れる。 美しき女性は、彼女を装う豪華絢爛たる宝飾で創られるのではなく、彼女の周りに漂う美しい空気(空間)によって創られるのである。
魅力的な女性とは 「たたずまい」 がいいのであり、魅力的な男性とは 「雰囲気(ムード)」 がいいのである。 同様に、文豪は
「文字が書かれていない行間」 で文学を語り、大作曲家は 「音のない休止符」 で音楽を語り、名優は 「セリフなき演技」 で人生を語るのである。
現代若者気質は 「言ってくれなければ解らない」 が仕事上のスタンスであり、「好きなら好きと言ってよ」 が恋愛上のスタンスである。
だがしかし、言われない言葉を理解することが 「仕事の核心」 であり、好きと言わない心情を察することが 「恋愛の核心」 なのである。
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