未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
大いなる曲者は人間である
第1746回
「人工知能オペレーション」 では、人工知能の未来を論考した。 行き着いた結論は、「チャットGPT」 を使おうが使うまいが 「事態は何も変わらない」 というものであった。
しかして、その結論に至った原因が チャットGPT をオペレーションするのが 「人間である」 という 「あたりまえ」 の理由であるとは、何を言わんやということであろうが、この人間こそが、この世の諸行の発生源であるとともに、かくなる諸行の数奇を司る 「大いなる曲者」 なのである。
人工知能が出力する回答案が最善であるかどうかは、利用する人間にとってはたいした問題ではない。 問題は、それによって当人に利益がもたらされるか否かである。 現代社会が推進する功利的経済学とはそういうものである。 仮にその回答案が最悪であったとしても、それによって利益がもたらされるならば、その最悪の回答案を使うかもしれないのだ。 まったくもって、現代人の行動原理は、したたかで、度し難く、救いがたいのである。
共産主義の中国の最高指導者であったケ小平は、実利主義的な改革開放路線を推進して、低迷していた中国をGDP世界2位にまで成長させる礎を築いた。 その彼が言った 「頭が黒かろうが白かろうがネズミを捕る猫がいい猫だ」 は今でも巷間の語りぐさである。
かくなる価値観に現代人が従うとすれば、「チャットGPTの脅威」 など何ほどのものではない。 だがその価値観が 「倫理的かどうか」 はまた別の話である。
2023.04.26
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