Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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人工知能オペレーション
 第1741回 「人工知能への警告」 で書いた 「チャットGPT」 については、今、さまざまな業界で 「使う、使わない」 の論争が巻き起こっている。 ある業界は使うと言い、ある業界は使わないと言う。 論争は未だその信義が確定されていないことに起因している。
 チャットGPT に使われる人工知能は、人類が営々と積み上げてきたさまざまな 「認識データ(ビックデータ)」 を基に作られている。 そのデータの多くは、デジタル化されているインターネット上のウェブデータが主であろうが、今後はさまざまな著作物のデジタル化の進展とともに、人類の歴史遺産のすべてのデータが取り込まれていくであろう。 それはあたかも人類の 「集合知」 そのもののような様相を呈している。
 人工知能はかくして編集された集合知から導き出される 「回答」 が最善のものであるとするのであるが、はたして本当にそうであるのか? 集合知である多数決を基とする民主主義によって為された結果である 「歴史的事実」 を鑑みれば、まったく 「了」 とは言い難い。 集合知であっても間違いは免れ得ないのである。 それは人類の未来に対する 「大いなる試行錯誤である」 と言ってしまえばそれまでであろうが ・・ それでは犠牲が大きすぎる。
 また人工知能が出力する回答案が 「最善策のひとつのみ」 というのも気にかかる。 そのような回答は 「いまだかってなかったこと」 である。 ある人の回答案を 「了」 とすれば、必ずその回答案を 「否」 とする人が登場して論争となることは、遥かな歴史空間を通じて体験してきた経験的事実であったはずである。 それこそが宇宙内蔵秩序としての 「対称性」 である。 1枚の紙は 「表裏」 で構成されるのであって、表だけ、あるいは裏だけという紙は存在しないのである。
 以上から人工知能の未来を予想すれば チャットGPT も最初は 「一人勝ち」 するであろうが、しばらくすれば、それに反するものが必ず登場するであろう。 賭け事であれ、投資であれ、「売買」 はそうして営々と続いてきたのである。
 以下は 第452回 「安心売買オペレーション」 からの抜粋である。
 現代グローバル経済の本質である 「安心売買」 の核心は 「リスクヘッジ」 である。 リスクヘッジとは、例えば為替取引で言えば、手持ちのドルの価値が低下するリスクを、事前にドルを空売りしておくことで回避するような操作(オペレーション)である。 このようなオペレーションは、現在ではあらゆる経済取引に運用されている。 しかし、あらゆるリスクにヘッジをかけたらいかなることになるのか? 株は上がりも下がりもしなくなり、景気は良くも悪くもならず、結局は何も動かなくなる。 プラスとマイナスを加算すれば 0 になることは当然のことである。 好況のような不況のような経済、安定のような不安定のような社会、安心のような不安のような心理、可もなく不可もない人生 ・・ 等々。 現代社会が呈する諸事相はこの 「安心売買オペレーション」 の産物である。 (2004.6.09)
 人工知能を使った 「チャットGPT」 であっても、かくなるリスクヘッジのオペレーションと何ら違いはない。 であれば、チャットGPTを使おうが使うまいが、結局は何も変わらない。 プラスとマイナスを加算すれば 0 になることは当然の帰結である。 だがひとつだけ明確なことがある。 それは世の中がさらに 「複雑怪奇」 になることである。 それだけは 「確かなこと」 である。

2023.04.25


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