未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
超人は永遠の空間に遊ぶ
「永遠回帰説」 は、ニーチェ哲学の中核的思想であり、その説の内容は
第820回
「永遠は瞬間にあり〜永遠回帰に思う」 に詳しい。 その中で、同じドイツの哲学者、ハイデッガーは、その永遠回帰説について以下のように語っている。
未来において何が起こるかはまさに決断にかかっているのであり、回帰の輪はどこか無限の彼方で結ばれるのではなく、輪が切れ目のない連結をとげるのは、相克の中心としての 「この瞬間」 においてなのである。 永遠回帰におけるもっとも重い本来的なものは、まさに 「永遠は瞬間にあり」 ということであり、瞬間ははかない今とか、傍観者の目前を疾走する刹那とかではなく、未来と過去との衝突であるということである。
第1738回
「超人への道」 では、ニーチェが未来に登場するであろうとした 「末人」 が理想とする 「幸福の世界」 について描いている。 その世界をつぶさに眺めると、次の真象がみえてくる。 末人が望む幸福の世界は 「時間が永遠に続く」 ことを前提にして考えられている。 私が構築した 「
ペアポール宇宙モデル
」 で表現すれば、末人が生きる世界は 「時間が継続する連続宇宙」 である。 他方。 超人が生きる世界は 「時間が断裂した刹那宇宙」 である。 一挙に還元すれば、末人は 「時間が永遠の世界」 に生き、超人は 「空間が永遠の世界」 に生きている。 言うなれば、末人は 「永遠の時間を獲得する」 ことで永遠の空間を失ってしまい、超人は永遠の時間を廃棄(線形時間の廃棄)することで 「永遠の空間を獲得する」 のである。
かくして、永遠の空間を失ってしまった末人としての現代人は、永遠の時間の中で、出来る限り長時間に渡って、自らが作りだした 「幸福の世界」 の中に生き続けようとする。 末人である現代人が健康に最大限の注意を払うのはそのためである。 他方。 永遠の時間を破棄することで、永遠の空間を獲得した超人は、自らが創りだした 「歓喜の世界」 の中で輝こうとする。 超人が感動に最大限の注意を払うのはそのためである。
「永遠は瞬間にあり」 とは、以上の思考展開から導かれる世界観である。 魂の閉塞に陥ってしまった現代人が目指すべき世界は、刹那の狭間に拓かれた 「永遠の空間」 にこそ存在するのである。
2023.04.07
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