未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
あるがままの世界
第1602回
では 「現実と仮想」 について考えた。 その冒頭で、現実は物理的な実在で構成され、仮想は意識的な想像で構成されること、さらにその実在は是非なき存在であって変更不能であるが、想像は曖昧な情緒的な存在であって変更可能であるとした。 だが想像が変更可能で曖昧な情緒的な存在であるとするならば、ときとして惹起される 「とめどもない情緒(感情)の横溢(暴走)」 によって、想像が制御不能に陥ってしまう。 そうなれば現実と仮想で出来ている世界は、あえなく破綻してしまうであろう。
情緒は 「理」 と 「情」 によって構成され相互に牽制し合っている。 情緒の暴走を防ぐためには理を高めなければならないが、かといって必要以上に理を高めれば、今度は情が死んでしまって、「現実」 は潤いのない 「砂漠のような世界」 に逸してしまう。 さじ加減は難しい。 哲学者、西田幾太郎が論じた 「絶対矛盾的自己同一の世界」 を、禅を究めたとある老師が 「あるがままの世界」 と一言にして還元した。 まことにもって言い得て妙である。
2022.03.12
copyright © Squarenet