Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
Turn

現実と仮想〜リアルとバーチャルの狭間
 世界は現実と仮想で出来ている。 現実は物理的な実在で構成され、仮想は意識的な想像で構成される。 実在は是非なき存在であって 「変更不能」 であるが、想像は曖昧な情緒的な存在であって 「変更可能」 である。 つまり、現実と仮想の狭間は、言うなればリアルとバーチャルの狭間であって、それは 「変更不能と変更可能」 の狭間である。
 空海の 「即身」 は、現実と想像の融合(一致)を唱導する。 だがそれは、変更不能な事象と変更可能な事象の合一を目指すようなものである。 普通で考えれば 「完全矛盾」 の状態であって、ノイローゼ症状を呈するような教えである。 自由に飛翔する想像をもって、拘束された現実をいかに画することができるのか?
 あるもの曰く 「想像は変更可能なのであるから、もって現実を変更可能にすればいい」 と。 またあるもの曰く 「現実は変更不能なのであるから、もって想像を変更不能にすればいい」 と。 事態はまさに日本の哲学者、西田幾太郎(1870年〜1945年)が論じた 「絶対矛盾的自己同一」 の世界である。
 西田曰く。 「過去は現在において過ぎ去ったものでありながら未(いま)だ過ぎ去らないものであり、未来は未だ来らざるものであるが現在において既に現れているものであり、現在の矛盾的自己同一として過去と未来とが対立し、時というものが成立するのである。 而(しか)してそれが矛盾的自己同一なるが故に、時は過去から未来へ、作られたものから作るものへと、無限に動いて行くのである」 難解至極である。
 とまれ。 問題は一言にして尽きる。 「世界は作られたものなのか? それとも作るものなのか?」 それについて西田は次のような言葉をのこしている。 「自己が創造的となるということは、自己が世界から離れることではない、自己が創造的世界の作業的要素となることである」 と。 畢竟如何。

2022.03.11


copyright © Squarenet