未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
ワームホール(3)〜有と無の狭間
表の世界と裏の世界は対称性をもった「Pairpole」であるが、有の世界と無の世界の対称性はさらなる根源的な「Pairpole」である。その「Pairpoleの狭間」は対称性が崩れ、存在はゆらぎの状態にある。エネルギは活性化し、事象は有から無への消滅と無から有への発生で沸き立っている。
第310回
「有と無の狭間」では、その有と無の狭間におけるワームホールの可能性を探った。
有と無の狭間
我々が現実として生きているこの世界は、無と有が混在した不可思議な宇宙である。無からさまざまな有が生まれ、またさまざまな有が無に消滅している。その様は、まさに川面に浮かぶ「泡沫(うたかた)」のようであり、かつ生まれ、かつ消えているのである。
その様相は人間の生死も同様であり、朝の紅顔、夕べの骸骨であり、生きる(有)と、死せる(無)は、日々繰り返されている。
有と無は、また創造と破壊に換言される。生きている者のひいき目では、どうしても生や創造の「有」に執着してしまうが、実は対極である死や破壊の「無」こそが、探求されなければならない。
この両極を繋ぐ時空のトンネル(ワームホール)は今では使われなくなった「思惟」という思考法によって開削されるのではなかろうか? 着想は突如として訪れた。
私はこのエッセイで「Pairpole」の対称性と、その対称性が破れた「Pairpoleの狭間」について探求を進めてきたが、この世における根源的なPairpoleとは、この「有と無のPairpole」ではあるまいか。
Pairpoleの狭間は対称性が崩れた刹那の空間であり、エネルギが活性化している空間である。有と無の狭間もまた同様に対称性が崩れた刹那の空間であり、有から無への消滅と、無から有への発生で、沸き立っている。物理学的に表現すれば有と無のエネルギが「ゆらぎの状態」にある。
我々が生きるのは、この有と無の狭間にある刹那の空間(世界)であり、我々の実相は、有でも、また無でもなく、その有と無の相転換が織りなす態様である。我々はその有と無の相転換の狭間で、「変幻自在」であり、「万能自在」である。しかして、その相転換を制御するものが「思惟」であり、有と無の世界を繋ぐ「意識ワームホール」もまた、この思惟によって発見されるであろう。
根源的なPairpoleである有と無の世界を繋ぐワームホールは思惟という意識操作で生まれる「意識ワームホール」によって実現するかもしれない。探求はその意識ワームホールに向かっていくことになる。
ワームホール(4)〜思惟半跏像への回帰 /
第988回
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2016.12.23
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