Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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人倫の天秤〜朝令暮改
 この世を量る天秤には相対的な価値を判定する「人倫の天秤」と、絶対的な価値を判定する「宇宙の天秤(天の天秤)」の2つがあることは度々論じてきたことである。そして今、世界は「人倫の天秤」1極だけの時代に入ろうとしている。言うなれば、すべては「人間が決めればいいのだ」という時代である。人間こそが全てで絶対だという価値観の台頭である。人類は気づかぬうちにいつの間にかはなはだ傍若無人になってしまったようである。
 だが人倫の天秤は「宇宙の天秤」の下に位置する天秤であることを忘れてはならない。米国のトランプ次期大統領がいくら「水を低きから高きに流す」と声高に主張してみても永遠に流れることはない。それは宇宙の天秤に支えられた「絶対的真理」であって、一介の人間がどうこうできるものではない。
 人倫の天秤は「限定された村内」でしか通用しないはなはだお手盛りの天秤なのである。それは人間生活にまつわるこまごました雑事を推し量るものであって、その値は時として、場所として、生々流転してひとときも定まらない。
 したがって、この天秤隆盛が行き着く先は「朝令暮改の流行」である。予測不能なトランプ氏の行動にゆいつ予測可能なことがあるとすれば、かくなる「朝令暮改の行動様式」であろう。このような流れは米国にとどまらず今後は「世界の趨勢」になっていくであろう。結果、世界の津々浦々で誘起される諸事相の推移はこれからさらに「場当たり的」に「変則的」になっていくであろう。
 他方、宇宙の天秤には多数決がない。ゆえに情実も打算も働かない。あるのは真実のみである。是非もない非情な天秤ではあるが、宇宙の天秤を見つめるその眼差しは常に澄んでいる。
宇宙の天秤(第375回
三界の狂人は狂せることを知らず(第921回

2016.12.09


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