未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
人間の実存性
世界は今、不確実性の世界に入り込んでいる。英国のEU離脱。米国の大統領選挙。ともに事前の予想からは大きく乖離した結果であった。 理由は何か?
あらゆるものがコンピュータ化されたことによる社会の変質によるものか? はたまたあらゆるものに対する価値観が多様化したことによる人間そのものの変質によるものか? いずれにしても今までのルールが機能しなくなってきていることは確かである。 では新たなルールとは何か?
状況を鑑みれば、論理に支えられた知性は力を失い、代わって現実的な実力行使が台頭していることが見て取れる。「論より証拠」というわけである。 ニーチェが予言したしたように「神が死に」、今度は「知性までが死に至る」ということなのか? あり得ないような道筋ではあるが、今では充分にあり得る道筋でもある。 人間にとって最高の資産(
第808回
)とは「考える頭脳と思う心」であったはずが、「考えない頭脳と思わない心」に変質してしまうとはいかなることか? しかしてそれが人類にとってみて進歩なのかあるいは退歩なのか? 混沌として分からない。
だが仮にこれが事実であれば、人類はそのことで崩壊してしまうのではあるまいか? しかしてその崩壊は人間の内部から外部から同時に訪れるように思える。人間としての知性や心を失ってしまっては、もはや人間とは言えない。その姿は迷妄する畜群のそれであり、魂を失ったゾンビ集団のそれのように写る。
人間である以上、コンピュータに振り回されてはならないし、システムに脅迫されてはならない。「否」という主体性は人間自らに存するのであって、コンピュータやシステムにあるわけではない。その地位は仮に天地が逆さになったとしても、決して失ってはならないものである。
2016.11.12
copyright © Squarenet