未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
矛盾の構図
以下の記載は「合理性か人間性か?」(
第724回
)からの抜粋である。
世論調査における安倍政権に期待する政策の第1位は「経済の回復と成長」とする民意は終局において自虐的な帰結に至る。なぜなら経済が回復し成長しさえすれば、雇用が回復するのかどうかはわからない。経済は経済的合理性で運営されているのである。それは経済的利益の最大化が目的であって、雇用の拡大が目的ではない。換言すれば、雇用の拡大は手段であって、経済的合理性に合致する場合においてのみ達成されるものである。雇用の拡大より他に効果的な手段(例えばコンピュータ化や機械化等々)があれば達成されないであろう。どうしても雇用の拡大を目的とするならば、経済的合理性を手段化することである。雇用の拡大のためには経済的利益を犠牲にするという政策であるが、このような政策が現実的に可能かどうかは疑問である。なぜなら経済的合理性は現代社会の中では揺らぐことなき絶対的基準となっているからである。
論旨は、前掲の「人間失格」(
第968回
)での社会システム変遷にともなう人間性喪失を、視点を変えて現代社会の基盤である「経済的合理性」から述べたものである。矛盾の構図はともに相似する。
アベノミクスが掲げる「経済成長による雇用拡大」、「1億総活躍社会の実現」等々の政策は、これらの矛盾を放置しては奏功することは期待できない。
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第968回
) へ
2016.09.28
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