Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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蠢く闇〜孤絶した風景
 相模原の障害者施設で発生した悲惨な事件は繁栄する現代社会の裏面で蠢く闇の深さを白日の下に晒した暗澹たる出来事であった。だがこの事件はその「蠢く闇」の氷山の一角であって、核心は日本の津々浦々、とどまることなく今も暗黙裏に燻り続けているのではあるまいか?
 翻って、現代は個々人の繋がりが断ち切られた社会に変じようとしているかにみえる。一見するとネットなどの情報技術によって繋がっているように見えて、実はまったく繋がっていない。自然界の動物として眺めれば、人間はまれにみる大集団をなす生きものである。だがその大集団をなす人間が個々では繋がっていないとはいかなることか?
 孤立した狼が仲間の群れと繋がっていないことは一目瞭然でわかる。だが仲間と繋がっているようにみえて孤立している人間の姿は見ただけでは判然としない。
 かって、大都会での人間の孤立を称して「東京砂漠」と言われたことがあった。「集団の中の孤独」を表現したものであって、その孤独が「砂漠のごとく無味乾燥で無機質、虚無にも似たものである」ことを語っている。 その光景は月に向かって山上の岩頭で吠える一匹狼の姿など遠く及ばないほどに「孤絶した風景」である。
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2016.07.27


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