未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
時空の喪失
「不確定性原理の探求(3)〜多世界宇宙解釈(
第888回
)」では「観測=時間」という等価原理を提示した。 宇宙の発生には「観測」という行為が不可欠であり、その観測の継続によって新たな宇宙が次々に発生する「連続的メカニズム」が「時間の正体」であろうとした。 さらに、このメカニズムを起動させる観測とは「あなたの観測」であって、あなたが観測を継続するかぎり、このメカニズムは稼働し続け、時間が流れるという感覚は、あなたの観測母体である「あなたの意識の流れ」そのものをあらわしているとした。 つまり、意識の流れが停止すれば、時間の流れもまた停止するであろうと ・・。
厚生労働省の推計(2012年時点)によれば、認知症高齢者数は、軽度者を含め約462万人に上り、予備軍とされる軽度認知障害の約400万人を加えれば、65歳以上の4人に1人が該当、この数はさらに増加していくという。
認知症をもって軽々に「意識の喪失」とは断じがたいが、仮にそれによって意識的観測が停止してしまうと考えるならば、4人に1人の割合で周囲から宇宙が消失し、ともなって時間も消失していっていることになる。 意識の喪失とは、すなわち「時空の喪失」なのである。 かくなる喪失が人間社会にとって大問題であることには相違ないが、宇宙にとってはさらに事は深刻で重大である。
2015.10.01
copyright © Squarenet