Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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何もしなくてもいい囚人

 かって世界は「可能性」に満ちていた。本を読み、映画を見て、人々はやればできると思っていたし、また多くはやればできた。だが現代は、その可能性が減少し、なかなか見あたらなくなってしまった。本を読んでみても、映画を見ても、人々はやろうとは思わないし、また多くはやってもできない。いうなれば人間としての可能性が低下しているのである。
 その原因は、人間がやる前に機械がやってしまうのであり、人間が考える前にコンピュータが考えてしまうからである。これでは「何もしなくてもいい」と宣告された囚人のごとくであり、つまらないことこのうえない。回帰への道は、ささやかであっても「自らやってみる」ことであり、たどたどしくも「自ら考えてみる」ことである。


第324回 「檻の中の囚人」

2014.01.28


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