等価原理と例え話 |
等価原理とは場が異なっても物理法則が同じく成り立つことをいう。例えば高速走行する新幹線の車内(場A)の運動も、静止した地面の上(場B)の運動も同様にニュートンの運動方程式を使って説明することができる。場がAとBに異なっていても等価的に同じ法則が成立するのである。相対性理論はアインシュタインが宮大工のごときの巧みさでこの等価原理という知的ツールを使って完成させたものである。科学哲学的思考から構築された私の「Pairpole宇宙モデル」もまた「細部の世界」と「全体の世界」が等価的な構造法則をもつであろうことを予測して考えられたものである。
思考をさらに進めると、我々が日常的に使う「例え話」もまた等価原理の上に成立するものであることが理解される。ある状況(場A)を説明するのに異なった状況(場B)での話を用いるのが例え話であるが、もし等価原理が成立していなければ有効性は保証されない。我々はその有効性を暗黙裏に認めているのである。私が高校生の頃、テレビでとある学者が湯川秀樹博士の中間子理論を中国の詩人、李白であったか杜甫であったか忘れてしまったが、その唐詩の内容をもって説明していたことを感動をもって聴いたことがある。「物理学の世界」と「文学の世界」が同じ言葉を使って説明できることに不可思議な世界を垣間見た気がしたのである。かく省みれば、私の思索の原点とは、あるいはこのあたりにあったのかもしれない。私が抽象概念を考えるときによく例え話を思い描き、同様に抽象概念を説明するときによく例え話を使うのはそのせいかもしれない。
かって研究開発中の映像技術を説明するのに以下のような例え話を使ったことがある。
1台の高性能カメラで撮った映像と3台の低価格デジカメで撮って合成した映像とでは、後者の方が画質(解像度・ひずみ等)に優れて方法として有利である。それは口径50mの電波望遠鏡1台で銀河を観測する場合と100m間隔で離間した口径10mの電波望遠鏡3台で観測した場合では、後者の方が画質(解像度・ひずみ等)に優れて方法として有利であるのと同じである・・云々。
もっともこの例え話がかかる説明に功を奏したのかどうかはいまだ定かではないのだが・・。
ともあれ等価原理は宇宙の内蔵秩序である対称性に匹敵する根本的な秩序であるように観える。あるいは等価原理と対称性は同じものであって1枚の紙の表裏のような構造なのかもしれない。 |
2013.04.01 |
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