Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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ワームホール(7)〜多世界宇宙解釈
 第888回「多世界宇宙解釈」では、シュレジンガーの波動理論における観測問題をハイゼンベルクの不確定性原理を使って再構築することで「観測=時間」という等式を導いた。
多世界宇宙解釈
 多世界宇宙に関しては「平行宇宙〜パラレルワールド(第830回)」で詳述しているので再度の説明は割愛するが、そこでは量子の2重性(粒子性と波動性)の解釈として平行宇宙が論じられている。要点のみ言えば「量子は観測が行われるたびに、次々に平行宇宙へと分岐し続ける」ということである。
 この帰結に不確定性原理を援用すれば、「量子の位置(粒子性)と運動量(波動性)の2つを同時に観測することができない」となる。観測が同時にできないとはすなわちそこは波動理論における「宇宙の分岐点」ということになる。
 さらにどちらかの宇宙を観測したとたん、他方の宇宙が観測できないとは、2つの宇宙の境界には科学理論が破綻してしまう「特異点」が横たわっていることを示している。互いの宇宙を「同時にのぞき見ることができない」のはそのためである。
 どちらの宇宙を見るかは観測次第である。いうなれば「いずれの宇宙を観測するか」という「きっかけ」次第である。さらに言えばそのきっかけとは「いずれの宇宙を見たいか」という「あなたの意思次第」ということになる。
 それはまた物質を追求してきた物理学が意識を追求する心理学に転じる重大な分岐点であるとともに、その分岐点こそ「多世界宇宙をつなぐワームホール」の入り口なのかもしれない。
では「同時とはすなわち宇宙の分岐点」とは何を意味しているのか?
 宇宙の分岐に不可欠な行為とは「観測」である。であれば観測を時間に置きかえることに特段の不都合は生じない。 「観測=時間」という等価原理である。 「観測の継続」とは「時間の継続」であり、それはすなわち新たな宇宙への「分岐の継続」であり、分岐に応じた宇宙が次々に発生する。おそらくはこの「連続したメカニズム」そのものが「時間の正体」であろう。
 そしてまたこのメカニズムを起動する観測とは「あなたの観測」であることも忘れてはならない。あなたが観測を継続するかぎり、このメカニズムは稼働し続ける。時間が流れるという感覚は、あなたの観測の母体である「あなたの意識の流れ」そのものをあらわしている。逆に意識の流れが停止すれば、時間の流れもまた停止するであろう。であればあなたの意識の流れをゆるやかにして、時間の流れをゆるやかにすることもまた可能である。(Pairpole 宇宙モデル/ ひも状物質 を参照)
 貴方が何を観測するかによって宇宙は次々に新たな宇宙に分岐するという多世界宇宙解釈はワームホールの性質を能弁に語っている。また導かれた「観測=時間」という等式は時間の正体をも明らかにしているように観える。貴方の観測とはまた貴方の時間であって、貴方の人生を構築する根源的な原動力である。
ワームホール(8)〜宇宙とは現象である / 第992回

2016.12.27


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