Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
Turn

Pairpole Meister (ペアポールマイスタ)〜陰陽師への希求
 「Pairpole Meister」とは陰陽師のことである。
 陰陽道の近代化を画して考案した私流の英訳であり、それはまた「Pairpole宇宙モデル」から導かれたコンセプトワードでもある。Pairpole宇宙が描く内蔵秩序としての「対称性」は「陰陽律」と等価である。
 Pairpole宇宙の対称性では電子(物質・実空間)と陽電子(反物質・虚空間)で構成された2重螺旋運動が登場する。それはまた陰波動と陽波動の2重螺旋運動であり、さらには遺伝子DNAの2重螺旋構造でもある。
 この2重螺旋運動を私は「あざなえる縄」と表現した。その意味するところは「禍福一体の理」である。禍福はあざなえる縄のごとく2重螺旋構造を成し、実空間における「禍の極点」は即ち虚空間における「福の極点」であり、実空間における「福の極点」は即ち虚空間における「禍の極点」である。分かり易く表現すれば「幸せの絶頂」と「不幸の絶頂」が表裏で一体を成しているような構造である。「人間万事塞翁が馬」という故事もまたそれに通じる。
 虚実で構成された2重螺旋運動をさらに還元すると宇宙を規定する物理学の基本法則である「エネルギ保存則」に帰着する。
 この基本法則によれば、宇宙のエネルギ総量は一定に保たれ、増えることもまた減ることもない。またA地点からB地点へはいかなるルートをとっても要するエネルギ量に差異はなく同じである。さらにある出来事の発生時に存在したエネルギの総量は、その出来事の終了時においても同量に保たれる。変わるのはエネルギの形態(例えは運動エネルギから熱エネルギへと)だけである。
 以上結言すれば、「この世では 何かが良ければ何かが悪いのが常であって 何もかもが良いというような うまい話は 存在しない」ということになる。
 平安の世に突如として現れ都に巣くう魑魅魍魎と闘った陰陽師、安倍晴明などは時代に先駆けてかかる知の領域に達していた超人であったのではあるまいか? 今まさに時空を超えて「Pairpole Meister」の到来が待たれる所以である。
※)人間万事塞翁が馬
 人生における幸不幸は予測しがたく「幸せが不幸」に「不幸が幸せ」にいつ転じるかわからない。安易に喜んだり悲しんだりするべきではないというたとえとして用いられる。
 昔、中国北方の塞(とりで)近くに住む老人(塞翁)の馬が、胡の地方に逃げ、人々が気の毒がると、老人は「そのうちに福が来る」と言った。やがて、その馬は胡の駿馬を連れて戻ってきた。人々が祝うと、今度は「これは不幸の元になるだろう」と言った。すると胡の馬に乗った老人の息子は、落馬して足の骨を折ってしまった。人々がそれを見舞うと、老人は「これが幸福の基になるだろう」と言った。1年後、胡軍が攻め込んできて戦争となり若者たちはほとんどが戦死した。しかし足を折った老人の息子は、兵役を免れたため、戦死しなくて済んだという故事に基づく。

2016.10.09


copyright © Squarenet