このシンプルな卓上実験によって、ファインマンは事故のおもな責任がNASA幹部にあることを明確に示したのである。彼らは当日の気温が通常よりも低すぎるから打ち上げを延期したほうがいいという技術者たちの警告に耳を貸さなかったのである。当日の朝の気温は摂氏マイナス1.7度だったが、過去の打ち上げでは、最低でも摂氏11.7度はあったのである。その不都合な事実を調査委員会はもみ消そうとしたのだが、ファインマンはひとり断固として闘い、言葉(数式)ではなく、実験(図形)によって白日の下にしてみせたのである。それは右脳の達人、リチャード・ファイマンが世界の人々に向けて放った面目躍如たる一世一代の「大見得」であった。
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