情報化社会が発展すればするほど人と人が直接会って話すことは少なくなっていくであろう。用事はインターネットやスマートフォンを使って済まされるようになる。今では数メートル先にいる友人とメールで会話する者までいる。
確かに用事はこれで済んだとしても、肝心要な人間としての存在感のあかしである「思い」や「願い」等々の心持ちが正確には伝わるとはかぎらない。怒っている人の気持ちは、直に怒っている顔を見て話さなければわからないのである。だが今では会話している相手が人間であるかの手応さえ希薄となり、あたかも無機質なロボットと話しているかのようである。そのうち生身の人間は得体が知れない者となり、とても恐くて面と向かって話すことなどできないなどと言い出すかもしれない。社会は人間で構成されているのであって、ロボットで構成されているわけではない。この前提がなくならないかぎり、人と人が直接会って話すこと以外に社会の実存性を確保する手だては他にない。
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