私がそれらの地を訪れたのは仕事でのことであって、ユングやニーチェを目的としたものではない。ラインの滝はドイツのシュトゥットガルトから車で国境を越えてスイスのシャフハウゼンという小さな町での商談に行ったときのことであり、ライプチヒは工作機械工場での、トリノはフィアットの自動車工場での技術説明会に行ったときのことであった。客先の要望に応じて計画された1回の出張で、これらの地のすべてへ偶然に行く確率は、ありえないほどに小さなものであろう。だがこのように現実として起きるのは、いまだ解明されていない「何らかの理」がこの世にあることを物語っている。
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