未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知のワンダーランドをゆく〜知的冒険エッセイから
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機の本質
天・地・人の三つの気が1点に集まった「機」により、とある時空風景が象出する条件とは何であろうか。換言すれば、無限数ある万物事象の諸相が集合化された混沌のエネルギの中から、あるひとつの相が規則正しく結晶化(自己組織化)する条件は何かである。
物理学者イリヤ・プリゴジンは、この自己組織化が熱力学で言うエントロピーが増大し、臨界点に達した時に、発生すると言う。エントロピーが増大するとは、万物事象が複雑化、曖昧化、雑然化する状況のことである。
日本の諺である「雨降って地固まる」、「窮すれば通ず」等々は、これらの自己組織化(結晶化)の様相を簡潔に語る。
つまり、機とは我々が一般に嫌う「修羅場」、「土壇場」等々の、にっちもさっちもいかなくなった状況のことである。
我々はこれらの状況を何とか回避しようと考えてしまうが、逆にこの切迫した状況こそが「機の本質」である。巷間言われる「ピンチはチャンス」とは、まさにこのことを述べている。
多くの歴史事件はこの証左である。風雲急を要する修羅場の中で、時代は創られてきたのであり、時代の英雄は、この風雲に乗って登場したのである。
この逆説は、英雄は時代が混乱し、風雲急を要する状況とならなければ、登場しないということであり、また時代が混乱し、風雲が押し寄せなければ、英雄とて何ら事が為せないということでもある。
文 /
柳沢 健
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