未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知のワンダーランドをゆく〜知的冒険エッセイから
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対称性の崩れとニヒリズムの超克
対称性は宇宙の根元的な内蔵秩序である。
私が構築してきた4つの知的ツール(Square / Squarefour / Wavecoil / Pairpole)はこの宇宙の根元的な内蔵秩序から導かれたものである。
「Square は構造の対称性」であり、「Squarefour は構造と運動の対称性」であり、「Wavecoil は存続の対称性」であり、「Pairpole は存在の対称性」である。
Square と Squarefour は工学分野で使用される対称性知的ツールであり、Wavecoil と Pairpole は科学哲学分野で使用される対称性知的ツールであるが、これらの違いは単なる対称性概念の階層的位置の異なりである。
Wavecoil は時間軸に添って現れる「連続宇宙での対称性」を述べている。連続宇宙に現れる対称性を平易に表現したものが「禍福はあざなえる縄」という禍福一体の考え方である。これを物理学的に表現したものが「エネルギ保存の法則」であり、連続宇宙ではいかなることが行われようと時間軸に添って現れるエネルギの総和は0となる。 この何をしても結果0になるという帰結が人間にニヒリズム(虚無主義)をもたらす原因であることは前述した。
Pairpole は時間軸に垂直な時間0の「刹那宇宙での対称性」を述べている。刹那宇宙に現れる対称性とは理論物理学者、ディラックが述べるところの物質(電子)と反物質(陽電子)の対称性ペア粒子による無(真空)からの有の発生である。
重要なことは刹那宇宙では連続宇宙に存在するエネルギ保存の法則が崩れており、このペア粒子はエネルギを必要とせずに、無(真空)から有の世界に生まれてくることである。
哲学的に表現すれば、「唯物は唯識から発生する」となる。つまり、唯物的物理学は唯識的心理学によってその存在証明がなされるということである。
無(真空)から有であるペア粒子が生まれる過程で発生する「対称性が崩れた空間」は物理学における最大の研究テーマである。それはまた私が言う「Pairpoleの狭間」であり、何ものかが生まれ(発生)、何ものかが死ぬ(消滅)空間である。つまり、刹那宇宙の態様である。
ディラックが明らかにした構造とはPairpole宇宙での「Pairpoleの狭間」である。
それは ・・ 「有と無の狭間」、「物質と精神の狭間」、「明と暗の狭間」、「表と裏の狭間」、「昼と夜の狭間」、「夏と冬の狭間」、「愛と憎しみの狭間」、「善と悪の狭間」、「生と死の狭間」、「信頼と不信の狭間」、「喜と悲の狭間」、「安定と不安定の狭間」、「富と貧の狭間」、「有名と無名の狭間」、「中央と地方の狭間」、「唯物と唯識の狭間」 ・・ 等々である。
換言すれば ・・ 東洋の英知、般若心経の「色即是空、空即是色」の世界である。
ニヒリズム超克の道はディラックのペア粒子の発生過程を理論物理学の手法で探求することにもかかっている。世界あまたの俊才科学者が現在この対称性が崩れている狭間の空間に、昼夜を分かたぬ研究を続けている。人類が新時代の扉を開けて新たな文明を築く日はそう遠くはないであろう。
それが明らかにされた時、「Pairpoleの狭間」はより多くの人々に知覚され、またそれを制御することで、現代人のニヒリズムは超克されるにちがいない。
文 /
柳沢 健
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