Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知のワンダーランドをゆく〜知的冒険エッセイから
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変化する意識と変化した意識
 人間意識の編集基準によって構築された現代文明の知的ツール、「形」と「数」は無意識下に潜在化してしまっているため、顕在意識で意識する人はまれである。
 どうして名刺が□なのか・・?
 どうして歳月が春夏秋冬の4つの季節なのか・・? 
 等々を疑問に思う人はいないのである。
 この状況は、我々人間が生きるに必要不可欠な空気の存在を忘れている状況と同じである。だが忘れているから必要でないということではなく、あまりに基本的で、あまりに「あたりまえ」のことであり、無意識下に埋没してしまっているのである。
 我々人間の日常生活において、意識するものは「変化」である。その意識機能は生物としての自己保存の機能でもある。人間は自己の身を守るために、異常な出来事、異常な事態、異常な事象に対してのみ敏感に意識するようにできているのであり、異常でない(つまり、変化しない)ものに対する意識は、無意識下の潜在意識に没し去るようにできているのである。日々繰り返される肺の呼吸や、心臓の鼓動を、意識している人はいないであろう。だが、ひとたびその呼吸や鼓動に変調(異常、変化)をきたすやいなや、全神経がそこに集中し、強く意識することになる。
我々が意識するものは変化であり、変化しないものはやがて無意識下に埋没する
 さらに思考を進めると、この変化したものも、やがては変化しないものに移行するのであり、やがては「その変化も」また無意識下に埋没していくことになる。この意識メカニズムは次々と繰り返され、無意識下に「変化したもの」が蓄積されていく。
現在とは「変化する意識」であり、過去とは「変化した意識」である
 この帰結は、我々が宇宙にアプローチするに際し、重要な示唆を与える。つまり、日々発生する変化にばかり目を奪われていると、事の本質を見誤るということである。変化する意識の裏側には、膨大な量の変化した意識が埋没しているのである。
 「形」と「数」という知的ツールの裏側には、このような変化した意識が埋没し、膨大な量の意識量が蓄積されているのである。現代人はこの蓄積された膨大な意識量に促されて「形」と「数」の編集基準を、この世で運用しているのである。
 私が研究してきた知的ツール、「Squarefour(□と4)」構築の道筋もまた、無意識下に埋没してしまった、変化した膨大な意識量を探し求める旅であった。その旅のパスポートとは、「あたりまえのことを問う」ことであり、このパスポートは、必ずや無意識下に埋没してしまった、この膨大な変化した意識量の国に、我々を導いてくれるのである。
 我々人類が無意識下に蓄積してきた変化した意識量は、北京原人やジャワ原人の時代から数えても100万年以上の長きに及んでいる。現代人は、もはや地球上にはコロンブスの大航海時代のような未知なる世界が存在しないと考えているが、人類の無意識下には、没し去った膨大な変化した意識量の国が、手つかずに残されているのである。
 我々は目に見える現実世界を眺め、倦怠し、無気力な生活を送っているが、それは我々の意識が、意識の表層である「変化する意識」に拘束され、意識の内側にある「変化した意識」を忘却してしまっているからに他ならない。
 この世は目に見える世界より、目に見えない世界の方が膨大に広く、また深いのである。退屈することなど決してないのである。
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