我々人間の日常生活において、意識するものは「変化」である。その意識機能は生物としての自己保存の機能でもある。人間は自己の身を守るために、異常な出来事、異常な事態、異常な事象に対してのみ敏感に意識するようにできているのであり、異常でない(つまり、変化しない)ものに対する意識は、無意識下の潜在意識に没し去るようにできているのである。日々繰り返される肺の呼吸や、心臓の鼓動を、意識している人はいないであろう。だが、ひとたびその呼吸や鼓動に変調(異常、変化)をきたすやいなや、全神経がそこに集中し、強く意識することになる。
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