もう10数年も前になろうか、私の研究所に勤務した紅顔初々しい青年がこの宮の造営にしたがって伊勢からこの地に移り住んだ人々の末裔であり、その彼の慈父が亡くなられた折りに、この宮で行われた神前葬に出席したことがある。
そのときは事もことであり、本殿に拝殿することなくきびすを返した。 その神明宮を今日ようよう訪れることができた。 県の天然記念物に指定されているスギ、ヒノキなどが茂る社叢には秋の穏やかな陽ざしが降りそそぎ、神域は厳かに静まりかえっている。
高い梢の葉影に棲息する小鳥たちだけが、遥かな経過時間に加えて、今日という 「刹那の刻」 を積み上げている。
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